第3回 「美濃和紙の里から~日本の紙と暮らしを見つめて」 (本講座は終了しています)
開催日程 | 2010年11月27日(土)・28日(日) |
||||||||||||||||||
訪問地 | 美濃市周辺 |
||||||||||||||||||
集合場所 | JR岐阜駅周辺(詳細はお申込み後にご連絡します) |
||||||||||||||||||
定員 | 25名 |
||||||||||||||||||
参加費用 | 29,000円(税込) ※内訳:宿泊/1日目昼食・夕食、2日目朝食/現地集合貸切バス (現地集合場所までの交通費は各自ご負担ください。) |
||||||||||||||||||
申込み締切り | 11月22日(月) ※定員に達しない場合は追加募集を行います。 | ||||||||||||||||||
お申込み方法 | 先着順に承ります。 お申込みフォームの受講申込み欄の「産業観光型NBM講座<<第3回 美濃和紙>>」にチェックをしてください。 お申込みを確認次第、お支払い方法をご連絡します。(一括銀行振り込み) |
||||||||||||||||||
スケジュール/予定 | 参加人数、受け入れ先の都合により、スケジュールが変更になる場合があります。
|
||||||||||||||||||
お問合せ | メイド・イン・ジャパン・プロジェクト株式会社 NBM事務局:後藤 TEL:03-5534-9903 |
産業観光型NBM講座 ~モノづくりと出会う旅~ 「美濃和紙の里から~日本の紙と暮らしを見つめて」
平成22年11月27日(土)・28日(日)の2日間、和紙の3大産地のひとつである美濃市に訪問させていただきました。
【1日目:11月27日(土)】
今日は、「手漉き」と「機械漉き」の生産スタイルを見学。
10:00 JR岐阜駅に集合しバスに乗って、美濃市に向かいます。
岐阜市街地の喧騒をぬけて、緑が濃くなってきました。
最初に見学させていただく「美濃手漉き和紙幸草紙工房」さんは、たっぷりな自然に囲まれています。
手漉き和紙の職人、加納武さん。
家具職人だった加納さんは、地元美濃和紙の魅力に取りつかれ、伝統工芸師後藤茂氏の元で美濃に伝承される昔ながらの手漉き和紙の修行を経て、2004年に今の工房を設立されました。
美濃和紙への熱い想いが伝わってくる加納さんの瞳と語り口、真摯な人柄が伝わってきます。
和紙の原料である、楮(こうぞ)、みつまた、雁皮(がんぴ)を実際に見せていただきました。
雁皮
楮
みつまた
堅い木が、柔らかい和紙に変わっていきます。
まず、刈りとった堅い木を釜で蒸し、外皮を剥いで内皮を取り出します。
堅い木の幹は和紙には使えませんが、火の燃料になります。
次に、内皮をちびっ子プールのような大きな水槽に浸し、その後、五右衛門風呂のような大きな釜で煮て繊維を溶かします。
煮上がった原料から細かいチリを取り除く作業は忍耐がいります。
『チリ取りの工程すら苦になりません。』の加納さんの言葉が心に残ります。
和紙の純原料を木槌で叩く作業を『叩解(こうかい)』といいます。
叩いて、折りたたんで、叩いて、折りたたんで…を何度も何度も繰り返します。
叩いて、叩いて、繊維が細かくなるほどに、柔らかい質感の和紙になります。
参加メンバーの方もちょっぴり体験。トン、トン、トン
叩解した紙料と水、「ねり」と言われる黄蜀葵(トロロアオイ)の根から抽出した粘液を適量混ぜます。原料は全て自然のもの。
とろとろの「ねり」です。
いよいよ、紙漉きです。こちらが紙を漉く機械です。
幾段階もの紙漉きの工程の中で今回拝見できたのは、漉いた紙を乾燥させる作業です。
重ねあわされた薄く薄く漉いた紙を1枚1枚丁寧にはがして、引戸のような大きな板に貼り付けます。
この作業は、経験を重ねたプロでないとできない技。
加納さんの華麗な技をご覧ください!
加納さんの技に感動している間に、加納さんのお母さんがこんなに素敵な差し入れを作ってくださいました。
手作り大学芋
カリカリで歯にくっつく市販のものとは違って、ふんわりとしたほんのり甘いお味。
これから昼食というのに全て平らげてしまいました。お母さんありがとうございました。
加納さんの工房の裏は、長良川鉄道の線路が走っています。プライベートな線路がお庭にあるようです。
タイミングよく単線の汽車が走ってきました。車両1両なんです。
お母さん直筆の美濃和紙サインが書かれていて、電車の乗客に美濃和紙をアピールしています。
加納さん、お母さんありがとうございました。
昼食は、旧美濃橋と川湊灯台を対岸に見ることができる「花いかだ」さんです。
手打ちそばといろり料理が自慢のご主人に素敵な料理をご紹介いただきました。
山で取れたてのキノコ、長良川で取った鮎の甘露煮…、素材もご自分で調達されるそうです。
旧美濃橋をバックに記念撮影です。
14:00 今度は「機械漉き」の丸重製紙企業組合さんを見学させていただきます。
左から辻守重理事長(父)、辻将之常務(弟)、辻晃一専務(兄)
先々代の美濃和紙伝承の想いを継承し、辻さんご一家の和紙の新たな可能性への取組みをうかがいました。
紙料のパルプです。これが機会漉きの和紙の原料になります。
これは、手漉きの『叩解(こうかい)』の作業を機械にしたものです。
殊に、こちらは50年前から働いている現役の叩解マシーン。
オドロオドロシイ鋭い刃が何枚もついています。これでパルプを粉砕するのですね。
どろどろになった紙料がでてきました。
こちらは紙漉きの機械です。よく見ると左右上下にと自動的に揺れ動いています。
このローラーの表面に細かくなったどろどろの紙料が張り付いて、
ローラーが流れる過程で乾燥され、和紙が出来上がり。最後はロール状に。
いろいろな質感の和紙がロール状に保管されています。
日本各地の様々なメーカーに出荷されていきます。
工場内の見学が終わり、いろいろな紙を見せいていただきました。
雁皮でできた薄い和紙をちぎって食べてしまう方も・・・お味はどうでしたか?
熱心にいろいろな和紙を見くらべている参加者たち!?ではなく、晃一専務よりプレゼントと言われて和紙を奪い合っている光景です。
ここからは、辻晃一専務のガイドによる美濃産地周遊です。
まず最初に訪れたのは、紅葉がすばらしい大矢田神社です。
赤、緑、黄色、紫など色とりどりの紅葉が出迎えてくれました。
ここでも記念撮影。
次は、大正5年につくられた日本最古の近代吊り橋である美濃橋です。
これが美濃橋です。
ところどころ激しく錆ついていて、かなり老朽化しています。総勢23名が橋を渡ります。
が、渡り終えてから気がついた人数制限20人以下と書かれた看板。
この通りは昔港でした。汽車が走る前は河川が運搬の重要な機能であり、この近辺も相当に繫栄をしていた。しかし、明治44年汽車が走り運送機能として河川が使われなくなり、さらに大正5年に美濃橋ができたことで渡しの機能がなくなりこのあたりもすたれてしまった。と説明を受けているところです。
江戸時代から明治後期まで活躍した川湊灯台。
17:00 だんだん辺りが暗くなり、これから「うだつの上がる街なみ」に向かいます。
こちらが「うだつ」です。
室町時代、火事のとき隣家から火が移るのを防ぐ防火壁の上に設けられた「うだつ」。
江戸時代には、装飾的になり財力を誇示するものとなり、転じて財力・見栄えがしないことを「うだつがあがらない」という慣用句に。
「あかりの町並み-美濃-」を堪能。
町の家々には和紙で作られた玄関の照明がつけられていました。形も絵柄も様々です。
ちょうど暗くなり始めたころにうだつの街なみに到着。夕暮れ時の街なみはとても幻想的でした。
全国からあかりアートを募集して、町家の軒先に展示。美濃和紙活性化をめざす美濃町の秋の一大イベント。
あかりアート作品で埋め尽くされていた広場にて。
晃一専務、産地周遊ガイドありがとうございました。とても素敵なガイドでした。本日が誕生日とうかがい、お別れの時に、参加者からおいしそうなバースデーケーキをプレゼントしていただきました。
さて夕食。 ベテランのバスの運転手さんの腕さばきで細い山道を通って、山深い、凍てつく空気に包まれた「ますの家」さんで地元で有名なイノシシ鍋をいただきました。
まずは山もりの産地の野菜をいれます。
そして、ロール状になったとってもヘルシーなイノシシの肉です。
秘伝の八丁味噌仕立てのスープが箸を進めます。
現地若者のプレゼンタイム。
まずは、丸重製紙企業組合の辻将之常務より、皆さんからの様々なご質問にお答えいただきました。
純雁皮紙(幻の内地雁皮 100%の和紙)は、その優美な光沢と機械漉きだからこそ可能な極限の薄さが特徴のようです。
http://www.chuokai-gifu.or.jp/marujyu/products/index.html
次は、こちらは朝訪れた幸草紙工房の加納さんです。
ご自身のお仕事の他、活動されていることをお話しいただきました。
ますの家さんのお座敷の障子紙は、加納さんにお知り合いの方が漉いたもの。ピンとした張りが違います。
http://www7.ocn.ne.jp/~mw-net21/
同社の最高級ブランドである「鳳凰の手紙」の手漉き和紙レターセットをご持参いただきました。
この和紙も加納さんが漉いたものです。
http://furukawashoten.jp/products_01.html
ますの家さん、おいししお鍋とお酒、そして女将さんのお気遣いありがとうございました。
【2日目:11月28日(日)】
1日目の夜は、ホテルのロビーで深夜まで、参加者による日本のモノづくりミーティングが開かれていたようです。
2日目は美濃和紙の里会館にて、「美濃と美濃和紙の歴史を語る」~丸重製紙企業組合辻守重理事長トゲストスピーカーの高木氏による講義を受講しました。具体的な地域説明と絡めて、この地で美濃和紙が育まれた理由を解説していただきました。
次は、「美濃和紙にふれる」
同会館にて紙漉き体験をしてきました。「ねり」をかき回し。
叩解作業
さあ、紙を漉く作業です。水がのると以外に重く、思うように動かせないという声が聞こえてきます。
仕上げは楓の葉を、思い思いに位置に配置します。
みなさん、手作りの和紙を何に活用されるのでしょうね。
午後からは「うだつの街並み散策」。自由時間です。
こちらは町を見下ろす小倉山展望台からの景色です。
古川紙工さんから参加者への素敵なプレゼント。
直営ショップ「紙遊」のフリードリンクチケットを頂きました。
美濃和紙の素晴らしさを感じ、つくり手の想いを胸に、つかい手のアイディアが広がります。
みなさんは、どんな活用法が浮かんだでしょう。
紙遊
今回訪問させていただきました美濃市は、その昔、洋紙が普及し始めてから、非効率な和紙の需要は減少をはじめ、新たな試みをしないと産地がなくなってしまうという危機に陥りました。
そこで、美濃和紙の特徴である薄くて丈夫である強みをいかし、照明に和紙をつかうことで新たに需要をつくっていきました。しかし、他の産地にまねされ、不織布などの合成品が出てきて、最終的にはアジアの安価でそれなりのモノに市場を荒らされてしまいました。
ここで、美濃市は、産地の魅力である「うだつの上がる街なみ」というすばらしい観光資源と明かりをつなぎ合わせる「あかりアート展」を企画し、全国の作家さんから作品を募集して、コンテストをひらき、その受賞作品を「うだつの上げる街なみ」に展示するイベントを1994年から始めています。今では期間中10万人超える観光客が美濃市に訪れているようです。
まだまだ課題は沢山あるようですが、現地の若者が頑張って、「ここが原点なんだ、ここに来ないと見れないんだ。」という地域のブランド化への取り組みとそのストーリーを、見て聞いて語り合うことができました。
後になりましたが、ご参加いただいた皆さま、我々の訪問を快く受け入れてくださった地元企業、店舗の皆さま、各方面でご尽力いただいた岐阜県の職員の皆さまに心から御礼申し上げます。
ありがとうございました。