「ニッポンのモノづくり」に受け継がれたモノを
「現代のモノづくり」に活かす
半導体研究開発 足立駿介さん 9期
新しいモノ、新しい価値はどのようにして生み出されるのだろうか?
あらゆる国や企業が切磋琢磨し、これだけ似たようなモノが溢れている世の中で、ヒトの心をつかむユニークなモノはどうやって生まれてくるのか?
その中でも、一部の日本の文化や伝統工芸といったものが広く世界的に受け入れられつつあると聞くが、その良さは何にあるのか?
そもそも自分は日本に生まれたから日本人をやっているが、日本の歴史、文化、伝統的な技術やその背景に関して何も知らないのに、“ニッポンのモノづくり”の“良さ”を理解し活かすことができるのだろうか?
現在、次世代の技術を生み出すべく、日夜研究開発に勤しんでいる現代のモノづくりの現場にいるものです。世の中にない新しいモノを、ヒトの役に立つモノを生み出したいと思いつつも、あれやこれや思い悩んでいた時期に出会ったのがNBM講座でした。
NBM講座のコンセプトは、“日本の伝統・文化をニッポンのモノづくりを通じて学ぶことにより、「日本のモノの価値」に気づき、それを伝える人材を育成する”こと。“ニッポンのモノづくり”の背景を知りたかった私にとっては、まさにうってつけの講座。
NBM講座では器、漆、色、和紙、染色、匠、茶を切り口に、それぞれの分野の第一線で活躍されている講師陣がその歴史的背景から現在までを一気に俯瞰。それぞれの視点から“ニッポンのモノづくり”にアプローチしていきます。
それぞれのテーマに共通する、“ニッポンのモノづくり”の根底に受け継がれるモノ。それは一言で表すなら“美意識・感性”。
それは日本の自然、風土といった環境が育んだ価値観。
そこから生まれるデザイン、色彩そして技術。
繊細、丁寧、簡潔、緻密。「神は細部に宿る」とはこのことか・・・どのテーマでも目の覚める思いでした。
「感性はそのヒトの周りのモノが育む・・・」。
講座の一幕における先生の言葉です。
モノの価値を見抜く。
それを実現するには、本物を知ること、本物に触れること。日常の身の回りのモノがそういった感性を、意識を育てる。講座では多くの貴重なモノを見、触れることができました。が、まだまだ足りないので、ここで得たものを軸に深めていきたいと思います。
学んだからには「人に伝える」というアクションも必要。とあるきっかけから日本酒とその酒器の愉しみに関するプレゼンをする機会を得、NBM本科、日本酒マイスター講座で学んだことを土台にして、日本酒や器をあまり知らない人を相手にお話しました。幸い、聞いていただいた方々にもこのプレゼンが日本酒や伝統文化を見直すきっかけになったようです。
まだまだ仕事においてNBMで学び体験したことが十分に活きているとは言えず、試行錯誤の中にあります。また、様々な疑問も解消したとは言えません。ただ、その中でも、現代のモノづくりにおいてニッポンが育んできた価値観を体現すべく、日々精進してまいります。
また、伝える、ということにも比重をおいていきたいと考えています。まだ具体的なプランの目処はたっていませんが、さらに見聞を深め、“何”をヒトに伝えるか、自分なりに模索していこうと思います。そのためにも、今後もNBMやMIJPのイベントにはできる限り参加したいと思います。よろしくお願いします。
最後になりましたが、MIJPの方々ならびにNBM講座の先生方、本当にありがとうございました。短時間で非常に密度の濃い体験をさせていただきました。過去のモノが消えつつある中、ど素人でど一般人の私がこれだけのモノに触れることは、なかなかかないません。貴重な体験でした。感謝いたします。