- 2011年12月8日
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【NBM 特別講座 モノづくり塾】「椀を仕立てる-受け継がれる日本の文化」~木地師の産地 南木曽を訪ねる~
【NBM 特別講座 モノづくり塾】はNBM本科を受講いただいた方に向けて、さらに日本のモノづくりを深く知って頂けるよう、モノづくりの現場を訪ね、実際にモノづくりを体感し、様々な角度から学んでいく講座です。
今回の「椀を仕立てる-受け継がれる日本の文化」の最終目的は、オリジナルの漆椀(飯椀・汁椀)を製作することです。旅の前には、2度の座学を通して、漆と木についての基礎知識を学び、オリジナル椀のデザイン画を制作しました。
南木曽の旅では、木地の部分を。そして、次回1月の旅では漆を塗るという、モノづくり体験のスペシャルな旅です。
今回、平成23年11月26日(土)27(日)の2日間 木地師の産地 南木曽の訪問致しました。さて、どんな旅になるのでしょうか。
【1 日目】11月26日 (土)
11:00 JR中津川駅に集合し、めざすは目的地 木地師の里 南木曽に向かいます。
運転手さんがこちらの方が近道です。と曲がりくねった山道を走ることに。道中、馬込宿を通り、大妻籠を通り、中山道を抜けました。昔の人々が行き来した中山道に皆さんそれぞれ思いを馳せます。
「木地師の里 ヤマイチ」さんへ到着。
こちらでは、南木曽ろくろ細工と呼ばれる伝統的工芸品を製作・販売していらっしゃいます。伝統工芸師の小椋一男社長を筆頭に8人の職人さんが、日々、木に向かい合っていらっしゃいます。
ヤマイチさんでは、観光客の方々を招き入れ、小椋さん直々に木地についてお話を受けることが出来ます。訪問した当日もたくさんの方々がお見えになり熱心に説明を聞いていらっしゃいました。
しかしNBM特別講座はそんな観光客の方々に無いものがあります。
ジャン!今回の講師 西山英煕先生の登場です。
先生は、前日より工房に入り、今か今かと受講者の皆さんをお待ちでした。
到着して、すぐに西山先生による講義がはじまりました。
木の種類・特徴について
木目について
横目と縦目のお話
木は切りだされてからも生きているので、時間が経つに従い縮まったりして木目の間隔が変化します。円形だったものが、徐々に楕円形になることもあります。今回の木は切りだしてから約三年くらい経過しています。
徐々に皆さん、木への愛情が増してきたようです。木にかける言葉が“素直な木”“かわいい木目”子どもにかけるような眼差しで様々な木と触れ合います。「惚れ込んでしまうとあちこちの木材所で買ってしまう。」西山先生の言葉にもうなずけます。木との出会いも人の出会いも同じ、一期一会の出会いなんですね。
何気なく置いてある木にも興味深々。“木”談義に華が咲き、前に進むのが困難です。
後継者の問題にも。最近ではいろいろな木地師の産地にも全国各地から木地師の仕事を学びに若者が集まるようですが、その土地には残らず各自地元に帰って工房をひらくということが多いようです。
小椋さんのご先祖は、第55代文徳天皇(西暦827~858)の第1 皇子惟喬親王(844~897)の従者、小椋大臣実秀と大蔵大臣惟仲の末裔とされ、近江の国蛭谷が発祥の地と文献などに記されている由緒正しいお家だそうで、貴重な資料も見せていただきました。皆さん、古文書を解読中です。
そろそろお腹もすいてきたところです。
さて、お昼はどこでいただくかと言えば、なんと、小椋さん自ら蕎麦を打ってくださるということに。西山先生曰く、ここ辺りのどこの蕎麦屋さんより、小椋さんの蕎麦がおいしいとのこと。当然、こね鉢は小椋さんがお作りになった一級のこね鉢を使っていらしゃるのですが、お味は・・・。
おいしい!
南木曽からすぐの飯田が産地の新蕎麦で、少し緑がかったものを使用されていて、香りが高く素材にもこだわりがみえます。
蕎麦を盛ったお皿もヤマイチさんで製作されています。
こんにゃく・いもの煮物・お漬物も手作り。
さて、お腹も満たされ、午後は製作を見学です。
旅のみの参加だったお二方。最初は「見るだけで、かまいません。」ということでしたが、周りの方々の楽しそうな様子を見て、急きょお椀を作成することに。
職人さんが製作する横で、デザイン講座がはじまりました。
細部にまでこだわります。細かい指示にも、職人さんはすべて答えてくれます。
体全体を使って、作業されていますね。
こちらの大ぶりのこね鉢は「木があばれなくなるまで、干して削って、製作開始から5年経過しています。(小椋氏談)」モノづくりは簡単にできるものではないんですね。
そして、完成。
南木曽の夜は、一段と早く、寒く感じます。
宿泊は大妻籠に創業して三百年の旅館、 波奈屋さん。
近くには男滝・女滝からの清流が流れています。
ようやく紅葉もはじまったようですね。
夕食は妻籠にある「音吉」さんです。
様々なきのこ料理を出していただきました。
“いくち”や“さくらしめじ”など中々珍しい種類のきのこがふんだんに使われています。
どぶろく
お酒がすすむに従って、職人魂とデザイナー魂の貴重なモノづくり談義は続きます。
南木曽の夜空は満天の星空。
冬になって、さらに空気が澄んでいるんですね。それでは、おやすみなさい。
【2日目】11月27日 (日)
江戸と京都を結ぶ中山道。
中山道、六十九次のうち江戸から数えて四十二番目に妻籠宿はあります。
中山道と伊那道が交差する交通の要衝として古くからにぎわいのあった場所です。
どこを見ても絵になる街並みは、先祖代々住み慣れた人たちにとっても、すべての日本人にとっても宝です。
妻籠では、家や土地を「売らない・貸さない・壊さない」という三原則があり、ここで息づく人も街並みも、何気なく時は過ぎているように見えますが、
この景色を守るために、きっと大変な努力をされているのでしょうね。
この時間、この季節でしか見られない光線。
おみやげではもったいないような、立派な品々がそろっています。
長野県伝統工芸品に指定されている蘭桧傘は1662年に飛騨の落辺から技法が伝えられたもので、現在も伝統の技からつくられる通風性・防水性に優れた実用笠や美しい網目の飾り笠が人気ということです。
ご紹介してくださったのは、小高勇さんです。
木の桂剥き。
薄く剥かれた木を細く切りそろえ、編み込んでいく「ひで」が完成。
「ひで」の幅によって、傘の形を変えることが出来る。
ここで息づく人たちによって歴史は作り上げられていくんですね。
次に訪れたのは、桶職人の藤原直喜さんの工房です。
手づくりの木工製品、一つ一つに職人の息吹を吹き込みます。
「職人の勘」をひとり工房で守っていらっしゃいます。
道具も手づくり。
使い込まれ、丁寧に手入れされている道具。
だいたいの発注から、使い勝手のいい立派な木工製品ができあがります。
休憩時には、こんな山々を眺めていらっしゃるのでしょうか。
創業60余年の志水木材は、機械を導入し、木風呂をはじめ木工製品を製材から加工までおこなっている会社です。ご案内して下さるのは、代表取締役の志水弘樹さん。
設立当時水車を利用してノコギリを回し製材。蜂蜜採取用の木箱と巣枠の製造からはじめられました。今でもほとんどそのつくりは変わらず、製品をつくられています。
そして、一番の人気商品が木の風呂です。昭和30年頃は「しみずの木風呂」で、生産量日本一になり、今もその技術は継承されています。
震災後、節電のためおひつが注目されました。初めて、おひつを使ったという人からは、食べたらおいしくて、もっと早くに知っておきたかったという声が多く聞かれたそうです。
乾燥。乾きすぎるのも駄目ということで、だいたい15%まで乾燥させ、製作するときには、12%くらいで削り出すのがベストなんだそう。
手づくりの工房と機械を導入した工場。それぞれに良さがあり、どちらも日本のモノづくりの魂を感じることが出来ました。
●富貴の森先生の総括を聞きながら、木曽の味覚を頂きます。
一からデザインをおこし、産地を訪ねモノづくりをする。職人さんとモノを作るという経験は座学だけでは、感じえないものがたくさんありました。まず、モノづくりに携わる方々への尊敬の念が、強くなりました。どれだけ大変な工程を経てここまでになり、消費者に届けられているか。
また、商品を見る目も変わったような気がします。今までより更に細部まで気になる自分がいます。
一つの商品・作品の後ろにはたくさんの人がいるんですよね。わかっているようで実際には理解できていなかったような気がします。しかし、今回の旅で事実それを感じ、人に触れ、素材に触れ、商品に触れ、日本のモノづくりを知るうえで得難い経験をすることができました。
南木曽の豊かな自然に育まれたモノづくりは、この場所だったからこそ完成し、今に続き、これからも継承されていくことでしょう。次回は、越前へ向かいます。次はどんな出会いが待っているでしょう。お椀もついに完成です。
最後になりましたが、ご参加いただいた皆様、私たちの訪問を快く受け入れてくださった地元企業・職人の皆様、各方面でご尽力いただいた皆様に、心から御礼申し上げます。誠にありがとうございました。