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日本の美の鑑賞者という立場ではなく、
発信者として行動していきたい。
会社員/鎌倉彫歴10年
楠部美貴さん 21期

楠部美貴さん

・鎌倉彫の作品:三段重
おせち料理だけでなく、お祝いの席でのお赤飯や和菓子をお出しするときにも活躍しています。

・鎌倉彫の作品:小鏡
常にバッグに入れて携帯しています。鎌倉彫の作品の説明をするときにも実物をお見せできるので便利です。

・鎌倉彫の作品:茶托と銘々皿
茶托と銘々皿を同じ柄で5セット作りました。気分によって使い分けています。

・自由研究 茶道
うつわとお茶の講座を受けた後、千利休に興味がわき、関連書籍を数冊読みました。

・自由研究 手ぬぐい
染色の講座を受けた後、経年変化の楽しさを体感するために早速手ぬぐいを使い始めました。

20代も後半に差し掛かったころ、親から「一生の趣味を見つけるなら、そろそろ動き出す時期だよ」とアドバイスされたことをきっかけに、もともと日本文化に興味があり伝統工芸品の美しさに惹かれていたこと、彫刻刀で彫る作業が好きだったことから、鎌倉彫のことを知り、習い始めました。

鎌倉彫とは、カツラやイチョウなどの木を用いて木地を成形し、文様を彫り、その上に漆を塗って仕上げた工芸品で、鎌倉市及びその周辺地域で作られたものをいいます。モチーフは椿や牡丹など日本の代表的な花や植物が多いのですが、その繊細な質感や動きを彫刻で表現することは想像以上に難しく、技術を習得するのに夢中になりました。

また木地自体も素材や環境によって差があり、丁寧に一彫り一彫り木と対話をするような気持ちで彫り進めていかなくてはならないところにも、奥深さと魅力を感じました。作品が仕上がるまでには数か月かかりますが、時間と労力をかけた分だけ作品の仕上がりに反映されるところがとてもやりがいがあります。

時間を忘れて作品作りに没頭するうちに気付けば10年目に入り、鎌倉彫教授連盟の発行するお免状も4枚目の「助教授」をいただきました。その一方で師匠の指導のもと日々作品を彫り進めていく中で、鎌倉彫を理解し、技術を磨き、伝統を継承していくためには、自分には決定的に足りないものがあるのではないかと感じることが多くなりました。鎌倉彫の、伝統工芸の本質的な価値を自分は理解できていないのではないか、という疑問が生まれてきたのです。

そんな折に、THE COVER NIPPONのお店を訪れる機会があり、ニッポンブランド・マイスター(NBM)講座の存在を知りました。「モノづくりを通して日本の伝統や文化を学び、『日本の価値』を伝えることができる人材をより多く輩出することを目的とした講座」という紹介に、まさに私の求めている問いの答えが見つけられる気がして、受講する決意をしました。

受講中は、
・「ものづくりの工程のストーリーを知り、自分の価値基準に照らしあわせて納得のいく価格ならば消費者は買う。これは需要と供給で価格が決まるというシンプルな構造では説明できない価値ではないか」
・「伝統工芸品の価値のうち、サステナブルであることは、今の時代の流れにとてもマッチしているのではないか」
・「日本の美意識が茶道に凝縮されているとしたら、禅の考え方はどう影響を与えたのだろう」
など、気になったことはメモをし、後から関連書籍を読んだり、実際に和紙や手ぬぐいを使ってみたり、抹茶を点ててみたりして体感することを心がけました。このテーマを見つけて自由研究的に学んで咀嚼するというサイクルを通して、徐々に自分の考えを深めることができた気がしています。どれもこれから鎌倉彫を続けていくうえで、そして日本人として豊かな暮らしをしていくうえで、とても大切な考えだと感じています。

また講座で先生方がおっしゃっていた言葉のなかでは、
・「目に見えないところにこだわるのが日本の美。本質を理解するためには学ぶ必要がある」
・「美しいものにただ感動するだけでなく、自分で生み出すものにどう生かせるかを常に考えること」
という2つが特に印象的でした。日本の美の鑑賞者という立場ではなく、発信者として世の中にどう還元していけるか考え、行動していこうという意欲が高まりました。

全講座を受講し、うつわ、茶道、漆、染色、和紙など、今まで別個の伝統工芸だと思っていた文化の根底に流れる美意識が、実は共通していることに気付けたことは大きな収穫でした。今思えば鎌倉彫を習いながら感じていた自分に足りなかった知識とは、まさにこの美意識の本質的な理解だったのだと思います。

NBMの本科ではこの大きなテーマの入口に立つための基礎的な知識を与えていただけたと感じています。そして何よりこれからの人生で答えを探していくべきこの大きなテーマに気付かせてくださったことに感謝しています。今後は本講座で垣間見えた日本文化の本質的な価値を自分なりにさらに深く理解するために、芽生えた好奇心を大切に、日々美しいものにアンテナを張って過ごしていきたいと思います。


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