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マイスター本科第18期第8回「これからの日本のモノづくり」講座を開催しました

【本科 これからの日本のモノづくり】
白洲信哉氏 × 外館和子氏 対談
「変化するものに美しさを見出す」

全8回のマイスター本科のラストを飾るのは、講座全体を監修されている工芸評論家・工芸史家・国際陶芸アカデミー会員の外館和子先生と、文筆家・月刊「目の眼」編集長の白洲信哉氏の対談形式の講座。ここでは、「これからのニッポンのモノづくり」に関する、おふたりの鋭い考察をダイジェストで紹介します。3時間にわたる対談の全容は、ぜひ実際の講座にてご確認ください。



外舘 「美術」と「工芸」について見てみると、「美術」はどちらかというと西欧的であり、「工芸」は日々の暮らしの中から生まれたものと言えますね。
白洲 日本は自然の中で生かされた生活観が基本だと思う。例えば「絵」。西欧は絵を壁に掛け、飾りっぱなしだが、日本の絵は掛け軸や、襖、屏風と、季節によって使い分けている。
外舘 そうですね。西欧の絵画は「フレーム=額」の中に納められ、見る人との距離がありますが、それに比べ日本の掛け軸や襖や衝立などは、人との距離がとても近いと思います。
白洲 我が家には祖父の小林秀雄(文芸評論家)が黒田辰秋氏から貰った小箱がある。(小箱を手に)


外舘 黒田辰秋は、近代を代表する木漆工芸家でどっしりとした力強い作風で、木工の人間国宝です。
白洲 我が家では気に入ったものはしまっておかず、使い倒すくらい使い続けている。この小箱も、人間国宝のものを使うのはもったいないという人もいるけど、五十年くらい使っている。角が丸くなったり色が変わったり、使う事で価値が出るという人もいる。
外舘 黒田の箱が、使い込まれる事で柔和な風情になり、使っている人がもう一つの「大らかで優しい黒田」の魅力を引き出したと言えますね。
白洲 使った時間は買うことはできないよ。
外舘 日本人は、時間の中で変化する事を良しとします。西欧はもとの形を重視し、何とか変わらないように努力し、変わってしまったものは消耗されたものとしてネガティブに捉えますが、日本人は変わっていくことにも美しさを見出します。


白洲 日本人の文化は、いろいろなものを輸入し昇華することで日本流のものにしてきた。例えば仏教のお寺。インドや中国のものとは違ってしまっている。お寺は元々金ピカだったが、経年変化で朽ちた感じを侘・寂として良しとし、塗りなおさない。素材感を大事にするのです。
外舘 それを良しとする文化ですね。割れたものを金継ぎして使い続ける文化もあります。
白洲 そう、割れる前も美しかったけど、もう一度金継ぎして新しい世界を作ってみようとする。一杯継いだから「東海道五十三次」(笑)。大切に思うものへの愛情だと思う。
外舘 日本の工芸は、修復する事を前提としていますよね。製作する時から、張り替る為に剥がし易くしてあったり、メンテナンスして使い続ける事ができます。
白洲 白洲の祖母の良い師匠だった青山二郎の言葉に「美は創造であり発見である」というものがある。まさに美は自分の価値観であって人から解説を受けて感じる事ではない。
外舘 必ずしも解説に従ってモノを見なければならないわけではないですね。まずは素直に美術を「美」として見る、モノと真剣に向き合う体験から感動が生まれます。
白洲 祖父の小林秀雄の著作「美を求める心」で語っているのは、見る行為がまずあり、純粋に見る事が大事だという事。解説が必要ないとは言わないが、まず「観る」が大事。知識はあとで勉強すればよい。
外舘 そうですね。まず感動から入って欲しいですね。見ることに対して能動的になって「感じる力」を養って欲しい。それは美術だけでなく、普段の身近な暮らしや仕事にも置き換えることができます。本来日本人が持っている「感じる力」や「丁寧に見る心」をこの講座で学んでいただきたい。

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